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クワガタ飼育ライトノベル『彼女のクワガタ趣味が俺の人生を侵食しそうな件』

 オリジナルクワガタライトノベル
『彼女のクワガタ趣味が俺の人生を侵食しそうな件』

 クワガタをテーマにしたライトノベルです。
 クワガタの魅力や飼育のヒントなどを盛り込みながらブログで連載していきます。
 最終的に文庫本一冊分ぐらいの文章量になればいいと思っています。


平田京助 宮間さくら


 プロローグ

 高校一年。夏の暑い日のことだった。
 学校から自宅の安い学生アパートに帰ってきた俺は、何もする気が起こらなかった。
 効きの悪いエアコンに晒されながら、ソファでぐったりとくたびれる。

 すると、インターホンが『ピンポーン』と機械的な音を奏でる。

 俺は、気怠そうに意識をやる。
 けど、意識をやるだけで動こうとはしなかった。
 どうせ、新聞か宗教の勧誘だろう。
 聞かなかったことにしよう。
 けど――。

『すいませーん』
 ドアの向こうから、天使のように綺麗な女の子の声が聞こえた。
 保険の勧誘にしては声が若い。
 俺の耳が意識が再び奪われる。

 ここは学生マンション。お隣さんか? そう言えば、たまにだが登校時に姿を見かけることがある。たしか、凄くかわいい子だ。制服は近所のお嬢様学校。容姿端麗文武両道など、俺からすれば高嶺の花である。

 ともすれば、聞かなかったことにできるわけがなく、俺は玄関へと赴いた。
 軽く服装を整え、顔を引き締め――。
 ――そして扉を開ける。

 すると、そこには紛う事なきお隣さんが佇んでいた。

 小顔で小柄な女の子。ぴょこんとしたかわいらしいツインテール。
 高校生だが、表情には若干の幼さが残っている。アイドルかと思えるほど神々しい。

「な、なんすか……?」
 俺は困惑していたが、みっともない対応をしたくないから、しれっとしたクールな挨拶をする。

「あ、あの……」
 おどおどしながら上目遣いを繰り出す彼女。これまたキュートな仕草だった。
 彼女の手にはプリンカップがふたつ。
 
 ――おそらく、これはひとり暮らしの男性によくあるイベントだ。
『おかずを作りすぎちゃったんで、お裾分けです』みたいな。その後、俺たちは距離を縮め、青春を謳歌するために大海原へと解放されるのだろう。

 麗しき隣人は、持っていたプリンカップを勢いよく差し出しながら言った。
「く、くわがた作りすぎちゃったんで、もらってくれませんかっ?」
 俺は、くわがたという料理を聞いたことがなかった。
 だから、彼女の言葉を繰り返す。

「……く、くわがた?」
「は、はい! し、知ってますよね? 黒くて、ハサミのある――」

 昆虫のクワガタでしょうか?
 それなら知ってます。

 小学校の頃、親父に縁日で買ってもらったことがある。
 まるで神様の悪戯としか思えないスタイリッシュなフォルムで、子供たちの心を掴んでやまない夏の風物詩である。

 ただ、作りすぎたというのは聞いたことがなかった。
 というか、クワガタは作るものではないと思うのだが。

 けど、彼女の手にあるプリンカップの中をよく見れば、そこには二匹のクワガタがいた。
 ♂と♀。それぞれわけて入っている。

 この隣人は、なにゆえにこのようなものをお裾分けする気になったのだろうか――。




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彼女のクワガタ趣味が俺の人生を侵食しそうな件

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